セブンズラグビーがオリンピック種目になった2016年リオデジャネイロ大会で男子日本代表のメンバー入りを逃し、バックアップメンバーとして帯同していた松井千士選手(キヤノン)と藤田慶和選手(パナソニック)が今回はメンバー入り。藤田選手は15人制の2015年ラグビーワールドカップに次ぐ大舞台を迎え、松井選手はキャプテンとしてチームをけん引する。

 リオ大会に続く2大会連続での選出は、38歳でチーム最年長の副島亀里ララボウラティアナラ選手(コカ・コーラ)、トゥキリロテ選手(近鉄)、羽野一志選手(NTTコミュニケーションズ)、彦坂匡克選手(トヨタ自動車)の4人。

ノンキャップ選手ははヘンリーブラッキン選手(NTTコミュニケーションズ)とボールコリン雷神選手(リコー)の二人で、最年少は明治大学3年の石田吉平選手だ。

 オンラインでメンバー発表会に臨んだ男子セブンズ日本代表の岩渕健輔ヘッドコーチは、日本代表としてグラウンド内外で相応しい選手であることと、自国開催での大会でかかるプレッシャーの中でも戦えることを主軸に選出したと説明。「難しい選考だったが、最後の12人は自信を持って選出できた」と自信を示した。

また、松井選手のキャプテン任命には、「有言実行してくれる。厳しい局面でも自ら体を張って戦ってくれる。全幅の信頼を置いて選出した」と言及。「いい準備をして大会に臨みたい」と述べた。

前回大会ではバックアップメンバーとして現地で日本の活躍を見ていた松井選手は、「チームの4位は誇らしかったが、試合に出場できず、今のラグビー人生でも一番悔しい経験だった」と振り返った。その経験から周囲の応援を力に、「また2020年を目指したいと思う気持ちに切り替えることができた。5年ぶりにやっとメンバーに選ばれたことを嬉しく思う」と話した。

さらに、「今回のオリンピックは、コロナ禍で世の中が大変な中で開催されることに大きな意味があると思う。ラグビー選手ができることはラグビー。全力で取り組み、残りの期間で必死に頑張ってメダルを獲得したい」と語った。

藤田選手も、「5年前はすごく悔しいオリンピックだった。その悔しさはオリンピックでしか返せないと思い、その時から東京オリンピックには必ず出たいと思っていた」と明かし、「この5年間、いろんな経験をしてきた。その経験を活かして、このチームでしっかり戦っていきたい。やっとスタートラインに立ったばかり。(大会までの)残り37日間、しっかり準備して、チームとして固まってメダル獲得を目指したい」と言葉に力を込めた。

また、前回大会に続いての選出となった彦坂選手は精神面での準備の重要性に言及して、「リオでは戦術的にもメンタル的にもいい準備ができていた。東京ではリオ以上にいい準備をしたい。特にメンタルでは、いい意味でも悪い意味でもプレッシャーがかかると思う。そこの対策もしていきたい」と語った。

サクラセブンズは若手主体、中村選手は外れる

一方の女子は、前回2016年大会の経験者は小出深冬選手(ARUKAS QUEEN KUMAGAYA)のみだ。

今回のオリンピックが代表デビューとなる選手は3人。大谷芽生選手(立正大学3年)、梶木真凜(自衛隊体育学校)、白子未祐選手(ナナイロプリズム福岡)で、代表キャップ一桁が、19歳の松田凛日選手(日本体育大学2年)と20歳の弘津悠選手(ナナイロプリズム福岡)を含めて5人を数える。

松田選手と弘津選手は、どちらも父親が15人制日本代表で活躍したという2世選手。松田選手の父・努氏はワールドカップ4大会出場したフルバックで、弘津選手の父・英司氏は1995年ラグビーワールドカップにフッカーとして出場し、神戸製鋼の黄金期を支えた1人でもある。

女子チーム最多キャップは、HSBCワールドラグビー女子セブンズシリーズでも経験を積んで22キャップを保持する平野裕芽選手(日本体育大学4年)。バティバカロロライチェル海遥選手(ARUKAS QUEEN KUMAGAYA)と清水麻有選手(日本体育大学大学院)の二人が共同主将としてチームを引っ張る。

 しかし、サクラセブンズこと、女子セブンズ日本代表で長年チームをけん引してきた中村知春選手(ナナイロプリズム福岡)は、メンバーには入らなかった。

女子7人制代表を率いるハレ・マキリヘッドコーチは、用意した日本語で説明。「まずチームのプレーをすること。その上で選手の個性を出せるかどうか」を基準に「金メダルを獲りにいける選手を、自信を持ってセレクトした」と語った。中村選手の選外については「まず本人に説明したい」として、会見での説明は避けた。

 清水選手は、「サクラセブンズの強みはチームの団結力。東京オリンピックで最高のパフォーマンスを発揮してメダルを目指した」と話す。

ともに主将を務めるバティヴァカロロ選手も、「私たちは多くのスタッフと選手とともに金メダル獲得という目標を持って、日々トレーニングに励んできた。全選手の思いを胸に、ベストなパフォーマンスをして、一番いい色のメダルを獲得できるように、残りの時間を精進して頑張りたい」と意気込みを示した。

男女ともに今月下旬から2度の国内合宿を実施して、本大会へ備える。東京大会では男子競技が7月26~28日、女子競技が同29~31日に、いずれも東京スタジアムにて開催される。前回、男子は4位、女子は10位に終わった日本だが、自国開催の大会でメダル獲得という飛躍を期している。

男子セブンズ東京オリンピック日本代表メンバー:

石田吉平(明治大学、キャップ6)

加納遼大(明治安田生命ホーリーズ、22)

セル ジョゼ (近鉄/日本ラグビー協会、11)

副島亀里ララボウラティアナラ(コカ・コーラ、34)

トゥキリ ロテ(近鉄/日本ラグビー協会、50)

羽野一志(NTTコミュニケーションズ、29)

彦坂匡克(トヨタ自動車、22)

藤田慶和(パナソニック/日本ラグビー協会、27)

ヘンリー ブラッキン(NTTコミュニケーションズ/日本ラグビー協会、-)

ボーク コリン雷神(リコー/日本ラグビー協会、-)

松井千士*(キヤノン/日本ラグビー協会、23)

本村直樹(ホンダ、25)

男子バックアップメンバー:

合谷和弘(クボタ/日本ラグビー協会)

津岡翔太朗(コカ・コーラ)

フィシプナ・トゥイアキ(セコム)

野口宜裕(セコム)

女子セブンズ東京オリンピック日本代表メンバー:

大谷芽生(立正大学ラグビー部、-)

梶木真凜(自衛隊体育学校、-)

小出美冬(ARUKAS QUEEN KUMAGAYA、19)

清水麻有*(日本体育大学ラグビー部女子、6)

白子未祐(ナナイロプリズム福岡、-)

堤 ほの花(日本体育大学ラグビー部女子、16)

永田花菜(日本体育大学ラグビー部女子、8)

バティヴァカロロ ライチェル海遥*(ARUKAS QUEEN KUMAGAYA、21)

原 わか花(東京山九フェニックス、6)

平野優芽(日本体育大学ラグビー部女子、22)

弘津 悠(ナナイロプリズム福岡、2)

松田凛日(日本体育大学ラグビー部女子、2)

女子バックアップメンバー:

香川メレ優愛ハヴィリ(ARUKAS QUEEN KUMAGAYA)

黒木理帆(ARUKAS QUEEN KUMAGAYA)

鈴木彩夏(YOKOHAMA TKM)

山中美緒(名古屋レディース)

注:* 印はキャプテン

所属のあとの数字はキャップ数

Photo credit: JRFU