前日行われたトップリーグプレーオフ決勝でパナソニックの5シーズンぶり5度目の優勝に貢献した福岡選手に、ラグビーキャリアの締めくくりに華を添えるリーグ表彰が待っていた。2021シーズンのベスト15に選出され、年間最優秀選手(MVP)を獲得した。

日本が初の8強入りを果たしたラグビーワールドカップ2019をはじめ、日本代表でも多くの試合で貢献した福岡選手は、医師への道に進むために今季限りでの引退を表明。4月からは医大生としての勉強とラグビーの「二足のわらじ」でトップリーグでの戦いに臨んだ。

 28歳のスピードスターは、今季11試合中10試合に出場し、2度のハットトリックを含む14トライを生み出し、守備でもハードワークを披露。2016-2017シーズンから在籍したパナソニックで「僕が加入してから獲っていなかった」というリーグタイトル獲得に貢献した。

 福岡選手のリーグ戦デビューは2016年9月17日のサントリー戦。14番でフル出場したが15-45で敗れ、パナソニックはこの黒星を含めて2敗してこの年はリーグ3位となり、サントリーが無敗で優勝。さらにシーズン末の日本選手権決勝でも両者は顔を合わせたが、そこでもパナソニックは10-15で敗れてタイトルを逃し、福岡選手にとっては苦い1年目となっていた。そこから5年を経た24日の今季プレーオフ決勝でサントリーと再戦。福岡選手は「こだわってきた」という11番で戦い、勝利で優勝を手にした。

オンラインで開催された24日の表彰式で福岡選手は、「引退する最後の年に、最高の栄誉をいただいた。光栄に思う」と笑顔を見せた。

幼少の頃に始めたラグビーだが、少年時代にはトップリーグに入ることも、ここまでラグビーを続けると思っていなかったそうで、大学受験で医大に不合格となり、そこでラグビーを続けることにしたそうで、その時の「自分の判断を誇りに思う」と振り返った。

自身については「集中が長く続かないタイプ」だと明かし、「目の前のことを一つ一つ積み重ねることで今まで成功してきた。引退する年を決めていたことで成長を続けることできたと思う」と分析。

さらに、「挫折を挫折のままで終わらせないように、それを少しでも次の成功のもとにできるように、すぐに切り替えて常に前向きにやってきたことで、なんとかここまでやってこれた」と語った。

バレット選手、TL上位はスーパーラグビーのレベル

 来年から始まる新リーグ発足に伴って最後のシーズンとなった今季を象徴するベスト15には、世界的トッププレーヤーが並んだ豪華な顔ぶれとなった。

 15人中、福岡選手、PR稲垣啓太選手(パナソニック)、NO8クワッガ・スミス選手(ヤマハ発動機)以外は12人が初受賞。その中には、サントリーSOボーデン・バレット選手、NTTドコモの躍進に貢献したTJ・ペレナラ選手、初の4強入りを遂げたクボタスピアーズから南アフリカ代表HOマルコム・マークス選手や日本代表FLピーター・ラブスカフニ選手、トヨタ自動車FBウィリー・ルルー選手らが選出された。

 リーグ戦7試合での6トライを含めた128得点で得点王も獲得したバレット選手は、「多くの素晴らしい選手がいる中で10番としてベスト15に選ばれて、とても光栄。サントリーが10番でのプレー機会を与えてくれて感謝している」と述べた。

 バレット選手は、セットプレーでのコールなど、チームの攻撃でより影響を与えることができるとして10番でのプレーを好むと言い、ここ数年オールブラックスやブルーズで15番でのプレーが多かっただけに、「サントリーで10番でのプレーを楽しんだ」と笑顔を見せた。

 「サバティカルで日本に来ると多くの人は休暇で来ていると思うかもしれないが、それは違う。日本のトップリーグの上位6~8チームにはスーパーラグビーのスタンダードがあるし、プレーオフ準決勝や決勝になればクボタ戦やパナソニック戦のように厳しい試合になる。すごくレベルの高い経験ができた。これを活かして、ニュージーランドでも引き続き良いパフォーマンスをしたい」と語った。

 一方、ペレナラ選手は、ファンの投票による最も印象的な場面へ送られるJSPORTS賞にも選出された。対象となったのは、3月6日の第3節リコー戦の試合終了直前のトライで、ペレナラ選手はこの得点で17-17の均衡を破ってチームに勝利をもたらした。

 また、サントリーWTBテビタ・リー選手は、ゲインメーターで最多718メートルを記録してOpta賞を獲得。ベスト15、最多トライゲッタ―賞と併せて受賞した。

 新人賞は、新型コロナウィルス感染拡大を受けて昨季が6節で中止となったことから昨季と今季の対象選手から2名選出され、クボタFB金秀隆選手とパナソニックWTB竹山晃暉選手が選ばれた。

なお、18シーズンを通しての通算通算最多トライはサントリーとキヤノンでプレーした元日本代表の小野澤宏時氏による109得点、通算最多得点は今季で引退したヤマハ発動機FB五郎丸歩選手の1,282得点、通算最多試合出場はヤマハ発動機で2004年から今季まで17季戦った山村亮選手の173出場だった。

ジャパントップリーグ2021年間表彰受賞者

<MVP>

   福岡堅樹(パナソニック、初)

<ベスト15>

PR1  稲垣啓太(パナソニック、7季連続7度目)

HO  マルコム・マークス(クボタ、初)

PR3  垣永真之介(サントリー、初)

LO  ブロディ・レタリック(神戸製鋼、初)

LO  ルアン・ボタ(クボタ、初)

FL   ベン・ガンター(パナソニック、初)

FL   ピーター・“ラピース”・ラブスカフニ(クボタ、初)

NO8 クワッガ・スミス(ヤマハ発動機、2季連続2度目)

SH   TJ・ペレナラ(NTTドコモ、初)

SO   ボーデン・バレット(サントリー、初)

WTB 福岡堅樹(パナソニック、3季連続3度目)

WTB テビタ・リー(サントリー、初)

CTB ディラン・ライリー(パナソニック、初)

CTB マイケル・リトル(三菱重工相模原、初)

FB   ウィリー・ルルー(トヨタ自動車、初)

<新人賞>

    竹山晃暉(パナソニック)

    金 秀隆(クボタ)

<得点王>

    ボーデン・バレット(サントリー、初) 128得点(6T、37con、8PG)

<最多トライゲッタ―> 

    テビタ・リー(サントリー、初)   10トライ

    マロ・ツイタマ(ヤマハ発動機、初) 10トライ

<ベストキッカー>

    田村 優(キヤノン、初)  成功率87.0%

<フェアプレーチーム賞>

    パナソニックワイルドナイツ (2季ぶり8回目)

<最優秀レフェリー>

    久保修平 初

<特別賞>

リーグ戦通算最多トライ 109トライ  小野澤宏時(元サントリー&キヤノン)

リーグ戦通算最多得点  1,282得点  五郎丸 歩 (ヤマハ発動機)

リーグ戦通算最多出場   173試合  山村 亮   (ヤマハ発動機)

Photo credit: JRFU