新型コロナウィルス感染拡大の影響を受けて、海外勢との対戦から遠ざかっていたセブンズ日本代表が今回参戦したのは、4月2~3日と8~9日の2週にわたってドバイで開催されたエミレーツ・インビテーショナル・セブンズで、日本のほかに男子はカナダ、ケニア、ウガンダ、スペイン、フランス、アルゼンチン、チリの8チーム、女子はアメリカ、カナダ、ケニア、フランス、ブラジルの6チームが出場した。

各チームは防疫対策として導入された「バブル方式」で一般との接触を遮断し、陰性確認のための検査や、ホテルと練習場、試合会場のみの行動制限が設けられた中での参戦となったが、女子7人制日本代表にとっては昨年2月上旬のHSBCワールドラグビー女子セブンズシリーズ第5戦オーストラリア大会以来、男子は昨年3月上旬のHSBCワールドラグビーセブンズ第6戦のカナダ大会以来の、海外勢との実戦という貴重な機会となった。

女子日本代表は、1回戦総当たり方式での対戦で、日本が勝利したのは第1週が初戦のケニア戦(19-14)のみ。アメリカに12-43、フランス#1に0-26、ブラジルに19-31、カナダに5-31、フランス#2に5-14で敗れ、1勝5敗の厳しい結果だった。

第2週はブラジルに14-24、カナダに0-28と落としたが、第3戦でケニアと10-10で引き分け、アメリカには0-31、フランスに5-43で敗れて、1勝1分4敗でグループ戦を終了。第2週はその後に順位決定戦が行われ、日本は5位決定戦でケニアに43-0で勝利して大会を終えた。なお、優勝は決勝でカナダに17-12と競り勝ったフランスで、3位はブラジルに26-19で勝利したアメリカだった。

結果以上の収穫

チームを率いたハレ・マキリ女子セブンズ日本代表ヘッドコーチにとっては、今年1月の就任以来初の大会参加となったが、「練習でやってきたことを試す、非常に良い機会になった」と大会参加の意義を指摘した。

特に「異なるスタイルのチームと対戦して、プレッシャー受けた状態でいかにベストな判断ができるか。私以上に選手が得たことの方が多かったはず」と今回の遠征を振り返り、「チームとしてとても良いプレーもあったが、個人による基本的な部分での致命的なミスもあった。ミス1つについてもチームによるものか個人のものか、選手が的確に分析する力を磨いて、試合中に的確な判断ができるようにしたい」と話している。

 選手も異口同音に実戦の価値を強調。第1週のチームキャプテンを務めた平野優芽選手(日本体育大学ラグビー部女子)は、14カ月ぶりの海外勢との対戦で「自分たちの中ではできたことが、できない。今回それを知ることができた」と言い、プレッシャーの違いを実感したと言う。

日本が目標とする五輪メダル獲得を念頭に、今年3月に21歳になった平野選手は、五輪までの残された時間で「(海外勢との)差を縮められるか。まだまだ成長スピードは上げていける。本大会まで90日以上ある」と、課題克服へ強い意欲を示した。

今回、第2週の女子日本選抜の主将を務めた山中美緒選手(名古屋レディース)は、2016年リオデジャネイロ大会に出場したメンバーの一人。世界とのギャップを埋めるためには「強度の高い練習」が重要になると指摘し、「練習から上げていきたい」と意気込む。

25歳の山中選手は2度目の五輪へ向けて、「前回大会の時はチームの最年少で必死についていっていたが、今は経験も加わって落ち着いて考えられる」と話し、「やるべきことに集中してやっていく」と力強く語った。

五輪への道筋

 一方、男子セブンズ日本代表は、第1週はグループステージでカナダ(21-45)、アルゼンチン(14-31)に敗れたが、第3戦でウガンダに19-12で勝ってグループ3位。準々決勝でスペインに15-12で勝利したものの、準決勝でアルゼンチンに5-24と敗れ、3位決定戦でケニアに14-31で敗れた。

 第2週ではフランス(21-26)、アルゼンチン(10-28)に敗れたがチリに21-12で勝って再びグループ3位で準々決勝に進み、そこでカナダに12-29と敗れると、ウガンダとの5位決定戦準決勝を延長の末に19-24で落としたが、7位決定戦でスペインに26-14で勝利して大会を終えた。

 男子の優勝は第1週がフランスを21-7で退けたアルゼンチンで、南米の雄は第2週の決勝でもカナダを26-19で下して2週間の大会で連勝した。第2週の3位はチリに47-0で圧勝したフランスだった。

 男子セブンズ日本代表の松井千士選手(キヤノン)は、コロナ禍で国内での練習が続き、実戦は大学生や日本にいる外国人選手に限られていたことに言及して、「世界との差がどれだけあるか、自分たちの現在地がどこにあるのか、正直不安だった」と明かしたが、その不安が今回の大会参加で解消されたという。

 しかも、過去の対戦で最後に負けることが多かったスペインに第1週の対戦で勝ったことで、「自信につながった。世界との差が元からあったわけでもないし、広がったわけでもない。僕たちの中ではすごく手ごたえを感じた」と振り返った。

 松井選手は、オリンピック開催が1年延期されたことでプラス面もあったとして、「体重が増えてもスピードは落ちず、海外の選手に当たり負けする部分が少なくなってきた」と明らかにした。さらに、チームとしてもコミュニケーションの応力やまとまりなど、「チームとしての総合力がすごく上がった」と指摘した。

 男子7人制日本代表チームを率いる岩渕健輔ヘッドコーチは、今回のドバイでの招待大会への参加で、コロナ禍でのチーム強化に手ごたえを得たと言う。

 「1年間以上試合がない中で自分たちの強化がどうだったのか、今回はっきりした。五輪へ向けて、もう一度道筋が見えるような時間になった」

 本大会まで100日を切り、依然としてコロナ禍の制限がある中で、チーム強化の時間は限られてきている。マキリ、岩渕両ヘッドコーチの下、選手たちは大会メンバーへのセレクションも睨みながら、今回の遠征で得た多くの収穫を活かしてプレーを磨く。

2016年リオデジャネイロ・オリンピックで五輪種目となったセブンズ競技は、今年の東京大会では男子が7月26日から28日、女子が7月29日から31日まで行われる予定だ。