男子セブンズ日本代表は、年明けから東京オリンピック代表候補合宿を繰り返し、7月23日に開幕する本大会へ向けた強化に、より一層の力を入れている。

 年末に発表された五輪代表候補第3次スコッドは20 人。2月に入って一人が離脱したが、本大会登録メンバーは12人に絞られる。どの選手も調整には余念がないが、中でも小澤大選手(トヨタ自動車/日本ラグビー協会)は5年越しの五輪代表メンバー入りに強い決意で臨んでいる。

 「リオで落選して、悔しい思いもしている。相当な覚悟をしてやっている」と、オンラインでの取材に応じた小澤選手は言う。

オリンピック競技としてセブンズが初登場した前回の2016年リオデジャネイロ・オリンピックで、日本はニュージーランドに勝利を挙げるなど4位に入る活躍を見せた。だが、そのスコッドに小澤選手は代表候補の最終メンバーに入りながら、最後の最後にメンバー外となった。

 それから5年。新型コロナウィルス感染症の世界的流行で1年延期された東京大会のメンバー入りを目指す小澤選手は、日本ラグビー協会と男子7人制日本代表専任契約を締結。代表合宿への参加を睨んで所属チームのある愛知県から東京に拠点を移した。

 拠点変更で練習環境が変わるリスクもあったが、「その中でもやれることはある」と考え、「半年後、自分が出場して五輪でしっかりメダルを獲る」と固い決意で臨んでいる。

 セブンズ日本代表では、2013年8月のアジアラグビーセブンズシリーズ・マレーシア大会でデビュー。以後、昨年3月にニュージーランドで行われたHSBCワールドシリーズ・ハミルトン大会まで46キャップを数え、キャプテンを務めたこともある。

 東京大会でのメダル獲得を目標にしている日本にとって、国際試合は重要な強化策であることは間違いないが、コロナ禍による渡航制限や入国制限などで国際間移動もままならず、ワールドシリーズも中断して久しい。

 「コロナがなければ今の時期にはワールドシリーズをまわれていた。自分たちより上のレベルのチームと試合をできないのが現状」と、世界の感染状況に理解を示しているが、もどかしさは否定できない。

「世界に目を向けて日々の練習に取り組んでいる。ディフェンスの強化もしてきて、粘り強くポジティブな守備ができていると思う」と手ごたえも得ているだけに、「世界にどれだけ通用するのか、今の段階で試してみたい。そうすれば足りない部分が見えてくる。試合があればもっと次のステップに行けるのでは」と、小澤選手は悩ましい思いを言葉にした。

 国際試合の代わりに、1月下旬の合宿では、日本が銅メダルを獲得した2018年ユースオリンピックの日本代表メンバーだった植村陽彦選手(筑波大学)や小西泰聖選手(早稲田大学)といった若手を含めたトレーニングスコッドが参加。彼らの力を借りて、ゲーム形式の練習を繰り返した。

 候補メンバー以外の選手との対戦は「自分たちには刺激だし、思い切ったプレーもできる。試合をすることで課題も見えてくるので、それを次の合宿で修正すればいい」と対外試合の効果を改めて指摘した。

 加えて、東京の次のオリンピックを目指す若手との対戦は、プラスアルファもあるようだ。

 「いいプレーをすればこっち(東京五輪メンバー)にも入ってくると思うので、自分たちもメンバーが変わるかもしれない。そこは危機感と自分たちのプライドを持ってやっている」と、今年5月に32歳になる小澤選手は言う。

五輪代表メンバー入りには、「自分のプレーをしっかり安定して出せれば問題ない。コンディションも上がってきている。同じポジションの選手と競って世界基準になれば選ばれると思う」と語り、決意を示した。

石田選手、「五輪はターニングポイントになる」

 東京オリンピックを目指す男子セブンズ日本代表候補の最年少は、20歳の石田吉平選手(明治大学)だ。

候補メンバーの中で唯一の現役大学生プレーヤーで、ベスト4に入った今年1月の15人制の全国大学選手権でもプレーしたばかり。だが、このあとは、7月のオリンピックまで7人制に専念する。

 セブンズ日本代表での活動は、昨年3月にバンクーバーで行われたHSBCワールドラグビーセブンズシリーズ第6戦以来の参加で、約1年ぶりになる。

短くないブランクだが、石田選手は「15人制で試合をしているので、経験的には僕の方があると思う。7人制の試合勘をしっかり克服して、代表に選ばれるようにやっていきたい」と、あまり意に介していない。

「大学選手権で負けて自分の足りないところを感じた」という実感を手に候補合宿に参加して、「ここは成長できる場。いろいろなことを吸収して成長したい」と話す。

 ワールドシリーズには2019年3月、アメリカでの第5戦でデビュー。その当時はまだ高校生だった。それから昨年3月のカナダ大会まで、ワールドシリーズやコアチーム昇格を懸けたチャレンジャーシリーズに6大会出場した。

 この1年は所属の大学チームでの15人制が主戦場だったが、その間にもワールドシリーズで感じたフィジカル面での課題を意識して、取り組んできたという。

 一方で、手ごたえを覚えたランについては「もっと磨きをかけたい。15人制の方が抜くのはむずかしいが、7人制の練習だと思って、どう抜くかを考えながらずっと練習していた」と明かした。

 2018年のユースオリンピックの日本代表メンバーで、3位に入る健闘を見せ、自信も得た。その後、あの大会で活躍したアルゼンチンの選手が15人制代表入りしたことに刺激を受けたようで、東京五輪の舞台でのアルゼンチンやニュージーランドとの対戦を心待ちにしている。

 セブンズ日本代表入りのために、新型コロナウィルス感染のリスクがあるとして、成人式の出席も見送った。

 石田選手は、「東京五輪は自分がアスリートであるうちに1回しかない。日本で開催されて日本中の人に注目される。ここが自分のターニングポイントになると見ていて、一番楽しみで一番チャレンジしたい大会」と、意気込んでいる。

 「中途半端が一番嫌い」という一途な伸び盛りの20歳が、五輪メンバー入りにアグレッシブに挑み、男子セブンズ日本代表チームを押し上げる。

 東京オリンピックの男子セブンズ競技は7月26~28日、東京スタジアムにて開催予定。ホスト国の日本のほか、フィジー、アメリカ、ニュージーランド、南アフリカ、韓国、オーストラリア、ケニア、イギリス、カナダ、アルゼンチンの11ヵ国の出場が決まっており、残り1枠は世界最終予選で決定する。