7月23日に開幕を迎える東京オリンピックまで約6か月となった2021年1月下旬、サクラセブンズの新指揮官に就任したハレ・マキリ新ヘッドコーチが、女子セブンズ日本代表候補選手と2度目の合宿に臨んでいる。

 「実際に活動を始めて、選手たちをもっと伸ばすことができると感じて、ずっとポジティブでエキサイティングに捉えている。まずは、ゲームを成長させるべく、自信を持ってもらうことに力を注いでいる」

オンライン取材に応じたマキリ新ヘッドコーチは、そう言った。

 7人制女子日本代表の指揮官の交代が発表されたのは昨年12月。開催国として出場が決まっている東京オリンピックでのメダル獲得という目標実現へ向けて、前任の稲田仁氏をパフォーマンスマネージャ―に配し、ニュージーランド出身のマキリ新ヘッドコーチを迎えた。チーム強化の追い込みを図る狙いだ。

 オークランド出身の42歳は日本代表として26キャップを保持し、古巣の宗像サニックスでFWコーチを務め、2017年7月からは男子セブンズ日本代表のアシスタントコーチを務めてきていた。それだけに日本や日本人についての理解も備わっているが、とはいえ、サクラセブンズを指導する時間は約半年という短期間になる。

 マキリ新ヘッドコーチは、「時間がないからこそ、大きなチャレンジ」という受け止めを示し、チーム強化のカンフル剤として選手のマインドセットの変更に着目。プラスアルファを生み出そうとしている。

 「同じチームで長い期間やっていると、慣れてしまって見方が固まり、それが当たり前になる傾向がある」と指摘。「だから、合宿で選手たちには『マインドセットを変えて、全く違うアプローチをしてみよう』と働きかけている。すでに良い反応も見られていて、多くの選手たちが自信を持って変わり始めている。マインドセットの変更はこのチームの取り組みで一番大きな点だ」と新指揮官は語った。

 時間との闘いにも果敢に挑んでいる。ニュージーランドから年明けに再来日して合宿で合流するまでの間に、過去の試合映像のチェックを繰り返し、サクラセブンズ選手たちの特長を把握。さらに、合宿では各選手との面談を取り入れて、互いの理解を深めることに努めている。

 ここまでのところ、「良いスタートを切れているし、ここにいる選手たちを伸ばすことができると思っている」とマキリ新ヘッドコーチは自信を見せる。

攻撃的な守備の確立へ

プレー面では攻撃的な守備に取り組んでいるという。

「目指すラグビースタイルは、エキサイティングでオープンなアタッキングラグビーだ。選手たちにはそれをやる力はある。だが、プレーではまず、ボールを獲得することが必要になる。そのためのアタッキング・ディフェンスだ」と新指揮官は語る。

「選手たちは切り替えの敏捷性などはあるので、チームとして基本的な理解を上げて守備の強化を図りたい。実際に守備は良くなってきている。大会ではベストなディフェンスを見せたい」と意気込んでいる。

マキリ新ヘッドコーチは、サクラセブンズが活躍することで、7人制の女子競技への関心が高まり、代表強化につながると期待する。

「女子セブンズ競技の裾野の拡大が大事だが、そのためには高校生から大学、その先と段階を経て進めるシステムが必要になる。それができれば、安定して有望な選手を代表に輩出することができるようになり、女子セブンズ代表の強化につながる。このチームが成長して活躍したら、7人制女子競技への関心も広がる」と話す。

東京オリンピックでの女子セブンズ競技は、7月29日から31日まで東京スタジアムにて開催される予定だ。

現在のところ、新型コロナウィルス感染流行に収束の兆しが見えず、7月の五輪開催への懸念も報じられているが、マキリ新ヘッドコーチは、「そこは我々がコントロールできることではない。大会はあってほしいし、そのために私がいる。あると信じて準備をしていく」と淡々と語った。

チーム強化に手ごたえも感じている。

「サクラセブンズの選手たちがハードワークをすることは分かっていたが、合宿で彼女たちと実際に活動してみると、ものすごくハードに取り組んでいる。多分、私が思っていた10倍はやっているので、私としてはとてもやりやすい。そこに私の持つ知識や経験を与えることができれば、チームは成長できる」

 マキリ新指揮官のサクラセブンズでの挑戦が始まっている。

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