女子15人制日本代表は、来年9月に行われるラグビーワールドカップへの出場権をかけたアジア最終予選突破、男女の7人制日本代表は来年7月の東京オリンピックでのメダル獲得を目指して、新型コロナウィルス感染流行で国際試合が延期されるなどの影響を受けながら、それぞれチームづくりを進めている。

 11月最後の日曜日に埼玉県熊谷ラグビー場で行われた「ジャパンラグビーチャレンジ2020」で、各チーム内の代表候補選手でレッズとブルーズの2チームを編成し、観客の前でのプレーを披露した。

 サクラフィフティーンこと女子15人制日本代表は、コロナ禍でのオンラインでの活動を経て9月からフィールドでの練習を再開し、その後、今回の試合前を含めて毎月合宿を実 施してきた。実戦は昨年11月のイタリア、スコットランド遠征以来1年ぶりだ。

 試合は、昨年の欧州遠征後に女子バーバリアンズに選出されたPR南早紀選手(横河武蔵野アルテミ・スターズ)とFL齊藤聖奈選手(パールズ)を擁したレッズが、開始10分過ぎの先制トライで先行した。

ブルーズはSH津久井萌選手(横河武蔵野アルテミ・スターズ)、SO山本実選手(パールズ)ら2017年ワールドカップ経験者を数人擁し、守備で対抗。2トライにつなげて前半半ばに逆転したが、レッズはテンポの良い試合運びでハーフタイム前に2トライを加えて再びリードを奪い、後半6トライを加えて51-22で勝利した。ブルーズは試合終盤にトライ2本を決めるなど、最後までハードワークを見せた。

 女子15人制日本代表のレスリー・マッケンジーヘッドコーチは、「長い間サポーターの前で試合をする機会がなかったが、ワールドカップ予選を控えて、こういうプレッシャーの中での試合は貴重な機会」と話し、コロナ禍の状況で感染防止対策を徹底しながら開催された有料観客試合の実現に感謝した。

元カナダ代表FWの指揮官は、「スピードやアグレッシブさのあるプレーを見せて、若手がインパクトを示してくれたし、コンタクトプレーやサポートなど練習でやってきたことを見ることができた」と選手らのプレーを評価。「期待していたことを確認できてよかった」と話した。

 サクラフィフティーン主将の南選手も、「21年ワールドカップへ向けて、今日の試合はとても良い一歩になる」と話し、昨年の欧州遠征時と比較してチームのレベルは「とても上がっていると思う」と語った。

 日本は来年のアジア最終予選でカザフスタン、香港と対戦し、3チームでトップになれば本大会出場が決まる。2位の場合は世界最終予選へ進み、最後の1枠を争う。

コロナ禍のため、実戦の機会が少ない中で準備を進めることになるが、マッケンジーヘッドコーチは、「互いに切磋琢磨することが競技力のレベルアップにつながる。フィジカルを上げなければならない」と話し、選手たちとのハードワークの継続で地力を上げて備えたいと語った。

男子7人制の本村が5トライ、女子は中村と原が2トライ

 男子と女子の7人制日本代表も候補選手がそれぞれ2チームに分かれて対戦。女子15人制代表の試合を挟んでの2試合で、オリンピック代表メンバー入りを目指して積極的なプレーを見せた。

 男子はブルーズでプレーした本村直樹選手(ホンダ)が1試合目に3トライを挙げて38-14の勝利に貢献。2試合目には、0-12ビハインドからハーフタイムをはさんで、再び本村選手が2トライをマークして存在感を発揮し、チームは22-12で逆転勝利した。また、ブルーズのセルジョセ選手(近鉄)が1試合目に2トライ、2試合目に1トライを決めた。

 本村選手は昨年秋のフィジー遠征で負傷し、今回が復帰戦となった。「久しぶりにユニフォームを着てプレーして、うれしかった」と笑顔を見せ、「本村がいると安心するというプレーができるように、安定感を増やせるようにしたい」と話した。

 女子は、リオデジャネイロオリンピックで主将を務めた中村知春選手(ナナイロプリズム福岡)がレッズでプレー。密集で果敢なプレーを見せてチームをサポートし、2試合で2トライ。チームメイトで20歳の原わか花選手(東京山九フェニックス)も2試合で2トライを挙げて、五輪代表入りへアピールした。

 試合はレッズが1本目を20-10で勝利、2本目は17-17で引き分けた。

ブルーズでプレーした大黒田裕芽選手(名古屋レディース)は、練習とは異なる実戦ならではのスピードに、「冬のマラソン大会を走り終えたみたいだった」と実戦不足を反省。「練習でも試合レベル近くでできるようにしないとならない。アタックでもディフェンスでも、まぐれではなく、何度も良いプレーをできる選手になりたい」と話した。

 レッズの主将を務めたバティヴァカロロライチェル海遥選手(アルカスクイーンズ熊谷)は、「長い自粛の後で初めての試合で、自粛明けから取り組んできたラグビーにチャレンジする機会になった。いい課題が出た。次につながる試合ができたと思う。チームとしては組織として勝負するのが大きなテーマ。そこはふれることなく、五輪に向けて準備したい」と話した。