日本選手権の中止が日本ラグビーフォットボール協会から発表されたのは4月2日。今季はジャパントップリーグの上位4チームによる対戦の形をとり、シーズンの最後を飾るプレーオフとして5月23日に準決勝、同30日に決勝が開催される予定だった。

 しかし、新型コロナウィルス感染拡大を受けて、トップリーグは6節を終えた2月末から中断し、再開できないまま中止に。それでも、新たな形で日本選手権の開催が検討されていた。ところが、感染拡大状況は、ここ数日で東京や大阪を中心に感染者数が急増し、週末や夜間の外出自粛が要請される展開となり、日本選手権も中止を余儀なくされた。

 日本協会は、新型コロナウィルス感染拡大の影響で「大会を安全に開催する担保ができないこと、大会に臨む十分な準備ができないこと」を中止決定理由に挙げた。

 同協会の森重隆会長は、「長い歴史を誇る本大会の開催が、大会史上始めて中止となることは大変残念」としながらも、「感染拡大防止のため、今、私共にできることに引き続き取り組む」と述べた。

 この決定を受けて、リーグ所属選手たちは自身のSNSなどを通じてコメントを発信した。

 サントリーのWTB/FB松島幸太朗選手は、「ある程度前からトップリーグ、日本選手権が中止になるのは、覚悟はしていましたが、それが現実となってしまいました」とコメントし、無念さをにじませた。

 

松島選手、外出自粛を呼びかけ

 今季終了後にフランスリーグのクレルモンに移籍が決まっている松島選手は、感染拡大収束へ向けて、「一人では、この大変な状況変えられませんが、みんなの一人ひとりの行動が未来を変えます。今日も感染者が増えています。外出は必要最低限にしていきましょう!」と呼びかけた。

 松島選手は自身のツイッターで、個人の行動について3月30日にもメッセージを発信しており、「もう一度、自分の行動を見直して、これからどう過ごすべきかを考え直さないとね!今の状況で自分勝手な行動をしてはいけないということを、よく理解していかないと、もっと広がってしまう…」と、個人の認識が大事だと訴えていた。

 日本代表の同僚でパナソニックのPR稲垣啓太選手は、「日本選手権の中止も決定し、今シーズンを終える事となりました。またラグビーが皆さんの前で出来る日が来る事を祈ります。皆で出来ることを続け、コロナに打ち勝とうぜ」と呼びかけた。

 パナソニックFLデーヴィッド・ボーコック選手は、自国政府の要請を受けて現在帰国中だが、自身のSNSでプレー再開へ向けて1.2キロのタイムトライアルに取り組んでいたことを明かしていた。

元オーストラリア代表83戦出場の31歳は、「残りのシーズンがキャンセルになったのは悲しいニュースだ。でも今、もっと重要なことが起きている。多くの人にとって厳しい時だ。ファンのみなさん、今季のサポートありがとう」とコメントした。

 

女子セブンズ国内大会も中止

 また、5月前半に予定されていた女子の太陽生命ウィメンズセブンズシリーズ2020の、第1戦東京大会(5月2、3日)と第2戦静岡大会(5月16、17日)も、開催中止が決まった。

 この2戦の代替え大会や、第3戦秋田大会、第4戦鈴鹿大会の開催については、検討される予定だ。

 協会では中止決定について、感染拡大で「お客様、選手、関係者の健康と安全を確保」をすることを挙げ、さらに、出場チームの練習状況にばらつきがあることから「準備状況が不公平になり得る」点や「準備不足による怪我等のリスクがある」ことも考慮したとしている。

 女子の大会も国内だけでなく、世界でHSBCワールドラグビー女子セブンズシリーズのコアチーム昇格を決めるチャレンジャーシリーズなど国際試合の中止や、東京オリンピックの来夏への延期などがあり、競技活動にも影響が出ている。

 女子セブンズ日本代表の中村知春選手(プリズム福岡)はSHSで、「困難に立たされた時こそ、”自分以外の人のために思いを馳せられるか“。ラグビーはそういう事を教えてくれたスポーツ」とコメントしている。