今大会3チームで争うプール戦で先に2敗となったカナダの3位が確定し、日本とアメリカの準決勝進出も決定。プール最終戦は1位突破をかけた戦いとなったが、日本が5トライを挙げる勝利で、エディー・ジョーンズ現体制で初の2連勝となった。
「2試合を終えて、我々は望むところにいる」
試合後、ジョーンズヘッドコーチは笑顔でコメントした。
高温多湿の気候の中で、日本はSH藤原忍とSO李がスピード感のあるテンポのよいプレーでチームをけん引。指揮官は「藤原と李の若い9番10番に、特に感銘を受けた。彼らはまた一歩前進したところ見せた」と評価した。
CTBディラン・ライリーが2戦連続トライを決め、2本のトライをお膳立てする活躍でプレーヤー・オブ・ザ・マッチに選ばれ、李は5本のコンバージョンとPG2本で16得点をマークした。
日本は試合開始5分で李のPGで先制。10分後には李が相手の裏のスペースをついてキックパス。これを受けたライリーが相手のタックルを受けながらCTBニコラス・マクカランにつないでトライをお膳立てした。
アメリカは18分にSOルーク・カーティーのPGで3点を返したが、日本は5分後にゴール前のラックからLOサナイラ・ワクァが持ち出して17-3とリードを広げた。
アメリカも前半30分に、ペナルティで得たラインアウトからモールで攻め、NO8ジャイムスン・ファナーナ・ショルツが押さえて再び7点差に詰めたが、日本は前半終了目前にペナルティから素早く攻めて、途中出場のHO原田衛がトライ。李の3本目のコンバージョンも決まって24-10で前半を終了した。
後半開始早々にはライリーがランニングで観客を魅了。自陣でパスを受けると相手4人を次々とかわし、さらに追いすがる2人を振り切ってポスト裏に飛び込み、日本が31-10とリードを広げた。
ところが、そこから日本はミスが目立ち、アメリカが2トライを奪って反撃。51分、日本のペナルティで得たラインアウトからモール攻撃でゴール前に迫り、日本選手を引き付けると、左アウトサイドでノーマークのWTBネイト・オウグスパーガーにパスを通してトライ。59分にも同様に、FWの攻撃で引き付けてオウグスパーガーの2連続トライで24-31とした。
しかし、日本はその直後の攻撃で再びテンポを上げて、相手に傾きかけた流れを取り返す。速いパスワークで攻め込んで相手のペナルティを誘うと、PGで着実に加点して、リードを10点差とした。
藤原は相手が反則後に「後ろを向いて帰っていた。チャンスだと思った」と話し、この試合を通して相手の隙を見逃さず、攻撃を畳みかけた。
さらにその5分後には、相手のペナルティで得たラインアウトからパスを受けた立川が巧みなプレーで相手をかわして抜け出し、ライリーにつないでWTBマロ・ツイタマの2戦連続トライに持ち込んだ。李が2点を加えて41-24として突き放した。
ジョーンズ指揮官は、「最後の20分間、プレッシャーがかかっていた中でアタックをし続けたところは評価したい。選手全員で落ち着きを持ちながらエネルギーを上げることができた。特に今日はフィニッシャーがとてもいい形でアタックをして良い仕事をしてくれた」と称賛した。
この結果、日本は2連勝でプールB1位、アメリカは1勝1敗の2位で終了。東京の秩父宮で行われる準決勝ではアメリカは14日にA組1位のフィジーと、日本は15日にA組2位のサモアと対戦する。なお、14日にはB組3位のカナダとA組3位のトンガによる5位決定戦も行われる。
李、プレーに手ごたえ
昨年のラグビーワールドカップも経験した李は、ジョーンズ体制ではここまでの5試合すべてに出場。新たに取り組んでいる超速ラグビーに少しずつ手ごたえを得ている。
日本はチームとして夏のテストシリーズではトライチャンスをものにできない課題が見られたが、李はアメリカ戦後に「前半は暑い中でミスもあったが、しっかり敵陣で戦えた。セットプレーでも優位に立ててFWがモメンタムを生んでくれた。確実にスコアしないといけない場面でできていた」と振り返り、「80分通してどう勝ち切るか、チームとしてクリアになってきている」と言った。
試合の状況に応じたキックの使い方も「後半はちょっと拮抗した状態で、自陣でボールを動かすのはリスキーな場面もあったので、コミュニケーションを取りながらできたと思う。特に、エリアマネジメントのところはいい手ごたえがあった」と話した。
後半途中からは立川の投入で10番から15番にシフト。23歳の新司令塔候補は準備していたポジションではなかったと明かしたが、「のびのびできた。神戸での経験が活きた。試合中は何が起こるかわからない。いろいろなユーティリティのポジションは自分の強みでもある。これから続けてやっていきたい」と意気込む。
ジョーンズヘッドコーチも「李が10番と15番をできることは、チームにとしてとても良いこと」と話している。
15日の準決勝で対戦するサモアについて、李は「次もしっかりコントロールしたい。準決勝は格段とレベルが挙がってくる。もう一段階レベルアップして、フィジカルや超速ラグビーの精度を高くして必ず優勝できるようにしたい」と語った。
アメリカ主将、「修正して次に臨む」
アメリカ代表のスコット・ローレンスヘッドコーチは、「日本におめでとうと言いたい。確固たるプレーを80分間貫いていた。我々は若いチームで良い点もあったが、日本が思っていた試合を実行した試合だった」と述べた。
アメリカ代表キャプテンのLOグレッグ・ピーターソンも、「我々にも良い点はあったが、日本は予想通りの非常に良い試合をした。特に最初の20分は非常に速いペースで、我々がペナルティを与えが場合には、一瞬の隙を非常にうまくついてきた。日本はディフェンスも良くて、こちらの動きを止められてしまった」と振り返った。
試合序盤でのプレーについて、「最初にうまくいかなかったのは、自分たちに問題があったと思う。修正すべきところはしっかり修正して、自分たちが思っているようにボールキャリーできるようにしたい」と話して次戦を見据えた。
アメリカは14日の準決勝でフィジーと対戦する
日本代表PNCアメリカ戦試合メンバー:
1三浦昌悟 (トヨタヴェルブリッツ)
→17茂原隆由 (静岡ブルーレヴズ)、後半9分
2坂手淳史** (埼玉パナソニックワイルドナイツ)
→16原田 衛 (東芝ブレイブルーパス東京)、前半37分
3為房慶次朗 (クボタスピアーズ船橋東京ベイ)
→18竹内柊平 (浦安D-Rocks)、後半6分
4サナイラ・ワクァ (花園近鉄ライナーズ)
→19ファカタヴァ アマト (トヨタヴェルブリッツ)、後半19分
5ワーナー・ディアンズ (東芝ブレイブルーパス東京)
6ティエナン・コストリー (コベルコ神戸スティーラーズ)
7下川甲嗣 (東京サントリーサンゴリアス)
8ファウルア・マキシ (クボタスピアーズ船橋東京ベイ)
→20アイザイア・マプスマ (トヨタヴェルブリッツ)、後半11分
9藤原 忍 (クボタスピアーズ船橋東京ベイ)
→21小山大輝 (クボタスピアーズ船橋・東京ベイ)、後半24分
10李 承信 (コベルコ神戸スティーラーズ)
11マロ・ツイタマ (静岡ブルーレヴズ)
12ニコラス・マクカラン (トヨタヴェルブリッツ)
13ディラン・ライリー (埼玉パナソニックワイルドナイツ)
14ジョネ・ナイカブラ (東芝ブレイブルーパス東京)
→23長田智希 (埼玉パナソニックワイルドナイツ)、後半9分
15山沢拓也 (埼玉パナソニックワイルドナイツ)
→22立川理道* (クボタスピアーズ船橋・東京ベイ)、後半12分
(注:* はチームキャプテン、** はゲームキャプテン)
アメリカ代表 日本戦試合メンバー:
1ジャック・イスカロ (Old Glory DC)
→17ジェイク・ターンブル (Anthem RC)、後半22分
2ケペリ・ピフェレッティ (Saracens)
→16ショーン・マクナルティー (Miami Sharks)、後半22分
3アレックス・モーガン (RFCLA)
→18ポール・モーレン (Utah Warriors)、後半7分
4ビリアミ・ヘルー (San Diego Legion)
5グレッグ・ピーターソン* (San Diego Legion)
→19ジェイソン・ダム (RFCLA)、後半19分
6パディー・ライアン (San Diego Legion)
7コリー・ダニエル (Old Glory DC)
→21テシモニー・トンガイヤー (NOLA Gold)、後半9分
8ジェイムスン・ファナーナ・ショルツ (Old Glory DC)
→20トーマス・トゥーアバオ (Utah Warriors)、後半30分
9ルーベン・ダハース (Cheetahs)
→22ジェイピー・スミス (Seattle Seawolves)、後半12分
10ルーク・カーティー (Chicago Hounds)
11ネイト・オウグスパーガー (Chicago Hounds)
12トマソ・ボニー (Old Glory DC)
→23ドミニク・ビーサック (Sait Mary’s College)、後半25分
13タビテ・ロペティ (Seattle Seawolves)
14コーナー・ムーニハム (Anthem RC)
15ミッチ・ウィルソン (New England Free Jacks)
(注:* はキャプテン)