「結果をとても喜んでいる」
日本代表のエディー・ジョーンズヘッドコーチは、9月のアサヒスーパードライ・パシフィックネーションズカップ準決勝のサモア戦以来、4試合ぶりの勝利を受けてそう言った。
指揮官が喜んでいるのは勝利だけでなく、若いチームが合計25分間の数的不利でも戦う姿勢を見せた点だ。
遠征第1戦のフランス代表戦で12-52と大敗から一週間、日本代表はフランスのサン・ドニから南東部のシャンベリーに場所を移して第2戦に臨んだが、ウルグアイのパスをつないでテンポ良く仕掛ける攻撃に手を焼いた。
ウルグアイに前半7分に攻め込まれ、オフロードパスからNO8にトライを許し、コンバージョンも決められて先手を取られた。
日本は直後にラインアウトからNO8姫野和樹がトライを奪って5点を返したものの、その後は相手陣内に攻め込んでもサポートが遅れる場面やペナルティで相手にPGを許すなど、なかなか良い形が作れなかった。
前半20分過ぎにはWTB濱野隼大が右サイドを抜けてトライを決めたと思われたが、直前のプレーでパスが前に流れたとTMOで確認されて、トライが取り消された。
日本は10月26日のニュージーランド代表戦でTMOによるトライ取り消しを契機に気落ちして19-64と大敗を喫した。フランス戦を含めて3戦連続でTMOによる取り消しを経験して、チームに動揺する様子は見られず、次のプレーに切り替えていた。
この直後の26分にはSO松永拓朗がPGを決めて2点差に詰め、32分にはFBマロ・ツイタマが足を活かして自陣から攻め込み、最後はラックからパスを受けた濱野が右サイドに飛び込んで逆転に成功。さらに、その3分後にもツイタマの突破を起点に相手のペナルティを誘うと、ゴール前のラインアウトからFL下川甲嗣がトライを決めて、日本が18-10とリードを広げた。
数的不利に
ところが、攻撃のリズムが出てきた前半38分、ハイボールの競り合いでキャプテンのSH斎藤直人がイエローカードを受けて10分間のシンビンとなる。
日本は一人少ない中、ウルグアイにPGで3点を返されて前半を折り返し、後半開始早々にもオフロードでつながれてFLルーカス・ビアンキがトライ。キックに安定感のあるSHダンティアゴ・アルバレスが2点を加え、再びウルグアイが20-18とリードした。
日本は齊藤がプレーに戻った直後の後半12分に、ゴール手前のラインアウトからモールで攻め込み、最後はブラインドサイドを突いてWTBジョネ・ナイカブラがインゴールに飛び込んで23-20と再び逆転。その約10分後には斎藤がPGを成功させて3点を加えた。
反撃の勢いを掴んだと思われたが、そこで再び数的不利になる。後半26分にLOワーナー・ディアンズが危険なプレーを取られて20分レッドカードを受け、日本は試合終了まで14人で戦うことになった。
日本はしかし、数的不利になりながらも積極的に攻めのプレーを披露。終盤に得点を重ねて相手を突き放した。
まず後半29分にPGで加点してリードを広げると、同38分には松永が右サイドを抜け出して、パスを受けたCTBディラン・ライリーにつなぎ5点を追加。斎藤のコンバージョンも決まって36-20で日本が勝利した。
ジョーンズHC「一歩前進」
ジョーンズヘッドコーチは試合後、イエローカードを受けた前半終了間際から後半序盤にかけた10分間とレッドカードが出された最後の15分間のプレーに言及。「我々はファイトし続けなければならなかったが、キャップ総数200以下という我々のような若いチームにとって、戦う姿勢を見せることができたのはとても良かった」と話した。
日本は2027年ラグビーワールドカップへ向けて若手を中心とした顔ぶれで今年5月からチーム作りを行っている過程にある。
指揮官は、「我々のように若いチームにとって、厳しい状況にどのように対応していくかは今後の成長に欠かせない部分だ。そこは、ここまでうまくいかないところもあったが、今日はその部分で1歩前に進むことができた」と満足そうな表情を見せた。
ジョーンズヘッドコーチは、「良いチームは良い時間を長く続けられる」と指摘。日本代表の課題として、80分間良いプレーを続けられる一貫性が必要だとして、「やり続ける、やり抜くことを好きになって楽しんでやっていく。そういう能力をもっと伸ばしていかなければならない」述べて、「アタックは悪くない。課題はディフェンス」と付け加えた。
勝利への貪欲さ
日本代表キャプテンの斎藤は、「フランスに負けてからウルグアイ戦へフォーカスしてやってきた。カードが2枚出て、14人になっても勝てたことはこの若いチームにとって大きい」と言う。
数的不利になった場面では、「アタックには自信を持っていた。守りに入らず、ボールにフォーカスして戦い続けたことが良かったと思う」と振り返った。
副キャプテンを務めたライリーも、「25分間を14人で戦ったなかで、忍耐力をしっかり見せることができた」と手ごたえを示した。
また、下川はチームの勝利への貪欲さを勝因に挙げた。
「勝ちに貪欲に、タフな場面、14人になった場面でも、全員でしっかり戦って勝ち切れたことはチームにとってプラス。勝つ喜びを味わうことができてよかった」と安堵の表情を見せた。
一方で、下川は守備のコネクションを課題に挙げ、「次のイングランド戦へ向けてクオリティを挙げていかないとならない」と述べて、次を見据えていた。
勝利を得て日本代表は11月24日に今回のツアー最終戦に臨み、トゥイッケナムのアリアンツスタジアムにてイングランド代表と対戦する。
日本代表 ウルグアイ代表戦メンバー:
1岡部崇人(横浜キヤノンイーグルス)
→18オペティ・ヘル(クボタスピアーズ船橋・東京ベイ)、後半26分
2原田 衛*(東芝ブレイブルーパス東京)
→16松岡賢太(コベルコ神戸スティーラーズ)、後半29分
3為房慶次朗(クボタスピアーズ船橋・東京ベイ)
→18オペティ・ヘル(クボタスピアーズ船橋・東京ベイ)、後半22分
4エピネリ・ウルイヴァイティ(三菱重工相模原ダイナボアーズ)
→19サナイラ・ワクァ(花園近鉄ライナーズ)、後半15分
5ワーナー・ディアンズ(東芝ブレイブルーパス東京)
6ファカタヴァ アマト(リコーブラックラムズ東京)
→20アイザイア・マプスア(トヨタヴェルブリッツ)、後半7分
7下川甲嗣(東京サントリーサンゴリアス)
8姫野和樹(トヨタヴェルブリッツ)
9斎藤直人**(スタッド・トゥールーザン)
→21藤原 忍(クボタスピアーズ船橋・東京ベイ)、後半39分
10 松永拓朗(東芝ブレイブルーパス東京)
11 濱野隼大(コベルコ神戸スティーラーズ)
12シオサイア・フィフィタ(トヨタヴェルブリッツ)
→23梶村祐介(横浜キヤノンイーグルス)、後半39分
13ディラン・ライリー*(埼玉パナソニックワイルドナイツ)
14ジョネ・ナイカブラ(東芝ブレイブルーパス東京)
15マロ・ツイタマ(静岡ブルーレヴズ)
→22ニコラス・マクカラン(トヨタヴェルブリッツ)、後半15分
注:**はキャプテン、*は副キャプテン
ウルグアイ代表試合メンバー:
1マテオ・サンギネッティ
→17マテオ・ペリージョ、後半14分
2ギジェルモ・プハダス
→16ホアキン・ミスカ、後半27分
3ディエゴ・アルベロ
→18イグナシオ・ペクロ、後半1分
4イグナシオ・ドティ
→19フェリペ・アリアガ、後半1分
5マヌエル・レインデカル*
6サンティアゴ・シベッタ
7ルーカス・ビアンキ
8マヌエル・ディアナ
→20カルロス・デウス、後半14分
9サンティアゴ・アルバレス
10イカロ・アマリージョ
11イグナシオ・ファッシオロ
12ファンマヌエル・アロンソ
→21ホアキン・スアレス、前半18分
13フェリペ・アルコスペレス
14バウティスタ・バッソ
15ファン・ゴンザレス
→23ガストン・エミレス、後半30分
リザーブ(プレーせず)
22イグナシオ・アルバレス
注:* 印はキャプテン
(Photo credit: JRFU)