HSBC SVNS 2024シリーズ全7ラウンド中6ラウンド目となった香港セブンズでは、4万席完売となった観衆が熱い声援を送る中、3日間を通してスリリングな試合が繰り広げられた。
女子決勝はニュージーランドがアメリカと対戦し、Michaela Blydeがハットトリックを決める活躍で36-7の勝利を収めて、3ラウンド連続優勝。勝ち点を106としてシリーズ首位に立ってきたオーストラリアに並び、得失点差で上回ってシリーズ総合トップに立った。
ブラックファーンズは試合開始早々にJorja Millerのトライで先制すると、Blydeが左サイドを突破して前半5分にも5点を追加。その後、6分にアメリカにイエローカードが出て数的優位になると、直後にもBlydeがインゴールに飛び込んで、リードを広げた。
アメリカは準決勝でフランスに19-5と勝って今季初の決勝進出で、Alex Sedrickが前半終了直前に1トライを返して7-17とした。だが、後半もBlydeに左サイドの突破を許して3本目のトライを決められ、ニュージーランドから流れを奪えない。
主導権を握ったブラックファーンズは終盤にMahina Paulがクロスバーの下に2本のトライを加えて勝利した。
「香港大会を連覇できたのは本当に特別な思い。私たちが見せた今日のパフォーマンスを誇りに思う」とBlydeは言う。
ブラックファーンズ、「基本回帰」で復調
ブラックファーンズは今季開幕戦のドバイで2位、続くケープタウンで3位、第3ラウンドのパースでは5位と、序盤戦は優勝から遠ざかっていた。
Blydeは「自分たちも満足のいくプレーができていなくて、多くの点で改善が必要だった」と今季序盤を振り返り、そこから基本を重視して改善したと明かす。
「スキルセットを速やかに発展させるチームは多い。自分たちは自分たちの最高を維持しようと考えて、シンプルなことを正しく遂行して、パスやトライの精度を維持して、ほとんどのチームよりフィットして速くなろうとしてきた」とBlyde。
「スピードとフィットネスが戻れば勢いをコントロールできる。それでトップコンディションを維持できれば、安定してオリンピックに臨むことができると思う」と語った。
3位はオーストラリア。先制しながらもフランスにトライ3本を決められて、7-21とリードを許す苦しい展開になるが、試合終盤にBridget ClarkとMaddison Leviの連続トライとTeagan Leviのこの試合2本目のコンバージョンで19-21と追い上げると、試合終了間際にオフロードでパスをつなぎ、最後はMaddison Leviがインゴールに飛び込んで24-21と逆転に成功。オーストラリアが今季2度の優勝と2度の準優勝など常に上位4位内に入ってきた強さを示した。
5位はカナダに19-15と競り勝ったフィジー、7位はアイルランドに12-5と勝利した日本で、9位にはブラジルを14-5で下した英国が入り、11は南アフリカとの接戦を17-14で制したスペインだった。
この結果、シリーズ総合トップには得失点差でオーストラリアを抜いたニュージーランドが立ち、両者は3位フランス(88)との勝ち点差を18とした。以下、アメリカ(82)、カナダ(72)、フィジー(54)、アイルランド(54)、英国(31)と続き、7位のアイルランドまではシリーズ最終順位7位以内が確定し、グランドファイナル進出が決まった。
9位以下のブラジル(31)、日本(24)、南アフリカ(19)、スペイン(15)は降格プレーオフ圏脱出をかけて、5月3-5日のシンガポールでの最終ラウンドに臨む。
男子はオールブラック7がフランスとの接戦を制す
男子の決勝はニュージーランドとフランスの顔合わせとなり、ニュージーランドが後半2トライを奪って10-7で勝利を収めて、昨季も制した香港で今季初の優勝を手にした。
前半は0-0とスコアレスの激しい戦いになったが、後半半ばにScott Curryが右サイドでパスを受け、相手のタックルを受けながらインゴールに飛び込んで均衡を破ると、直後には左サイドでの競り合いから相手のミスをついたプレーからCody Vaiが5点を加えた。
フランスは試合終了間際にVarian Pasquetがトライ、Rayan Rebbadjがコンバージョンを成功させて7点を返したが、万事休した。
フランスは連続優勝こそ逃したものの、ここ3ラウンドは3位、1位、2位とトップ3入り。今大会はAntoine Dupont選手が不在ながらも力量を発揮。自国で開催される今夏のパリ・オリンピックへ向けて着々と結果を積み上げている。
香港大会連覇となったニュージーランドのVaiは、「去年の大会優勝より、少し特別な感じがしている。今回のチームのメンバーの多くは香港での優勝経験がなかったし、その彼らが目標としてきた一つである優勝を一緒に達成できた」と言う。
今季初優勝を手にして、Vaiは「香港は好転のきっかけにしたいと思っていた大会の1つ。ここからオリンピックまで右肩上がりに行けると思う。この道のりはオリンピックまで続いているから」と手ごたえを口にした。
3位はアイルランド。今大会で7人制デビューをしたマイケル・フーパーを擁するオーストラリアを14-5で下した。Hugo Lennoxが前半で2本のトライを決めた。
5位は南アフリカに33-14で勝利したフィジーで、7位はスペインに19-17と辛勝のアメリカだった。
9位は今季ここまで優勝3回準優勝1回で総合首位を快走してきたアルゼンチンで、今季初めて8強入りを逃したが、9位決定戦でサモアに42-0と完封勝ちを収めた。11位はカナダに26-17で勝利した英国だった。
今大会は苦戦となったが、アルゼンチンは勝ち点20差の貯金が効いて勝ち点94でシリーズ総合首位をキープ。2位のアイルランドが勝ち点を86に伸ばして、その差は8に縮まった。
だが、アルゼンチンは最終ラウンドのシンガポールで4位以上に入るか、或いはアイルランドとの勝ち点を8差未満で終了できれば、レギュラーシリーズ優勝が決まる。
香港大会3位はフィジー(76)で、4位フランス(74)、5位には優勝で勝ち点を73に伸ばしてオーストラリア(69)を抜いたニュージーランドが入った。以下、オーストラリア、南アフリカ(58)、アメリカ(44)と続き、7位南アフリカまではグランドファイナル進出を確定させた。
9位以下は降格プレーオフ進出となるが、英国(37)、スペイン(33)、サモア(27)、カナダ(13)と続いている。
次回シンガポールでの最終ラウンドを受けて、男女とも9位以下の4チームは5月末のマドリードでのグランドファイナルで、ワールドラグビー・セブンズチャレンジャーシリーズ上位4チームとともに来季参戦を懸けたプレーオフに臨む。
サクラセブンズは今季ベストの7位
サクラセブンズ女子7人制日本代表は今季最高の7位に入り、シリーズ総合順位を1つ上げて10位としたが、降格プレーオフ圏からの脱出は次節の結果次第となった。
プールCでカナダ、アメリカに敗れた後、スペインとのプール最終戦で試合終了間際に原わか花が12-12の均衡を破るトライを決めて、日本が19-12で勝利して今季初の8強へ進出した。
準々決勝では、総合順位トップに立ち、プールBを3戦全勝で勝ち抜けたオーストラリアと対戦。ハードな守備で相手にプレッシャーをかけて粘ったが、前半終了直前にオーストラリアのTia Hindsが日本の守備のギャップをついて抜け出して先制した。
日本は攻撃でパスの乱れや相手のタックルを受けてボールロストになるなど苦戦。後半半ばには相手にイエローカードが出て数的優位になり、日本が22メートル内に攻め込む場面もあったが、ハンドリングミスで得点に結びつけられなかった。
オーストラリアは後半終盤にTeagan Leviが自陣22メートル内から抜け出して5点を加え、コンバージョンも決めて12-0で勝利した。
7位決定戦へ回った日本は、アイルランドと対戦。先制を許したものの、前半終了間際にスクラムから平野優芽が持ち出してトライを決め、5-5で前半を折り返した。
その後、後半半ばに中村知春がイエローカードを受けて数的不利になったが、粘り強い守備で相手の攻撃を封じて6人での時間帯を切り抜けると、残り時間2分を切って大谷芽生が巧みなステップで相手守備をかわしてクロスバーの下にトライ。西亜利沙のコンバージョンも決まって12-5で勝利した。
大谷は、「粘りのディフェンスや僅差の試合を勝ち切れた」と手ごたえを示した一方、「アタックの継続とトライを取り切る点を次へ向けて修正する」と課題も挙げた。
今季のシリーズでは総合順位8位以内で終わることができれば来季自動残留が決まり、マドリードでの昇格降格プレーオフ参戦を回避できる。現在総合順位で8位の英国とは勝ち点9差だ。
大谷は「シンガポール大会でもベスト8以上にいけるように、全員でいい準備をしたい」と話した。
今季3ラウンドぶりの参戦となった辻崎由希乃は、チーム今季最高の7位フィニッシュについて「我慢の強いられる試合が多かったが、13人全員がそれぞれの役割をしっかり果たして最後まで戦い抜いた結果」と受け止め、今年7月のオリンピックを念頭に、「勝ち切れなかった相手にも勝ち切れるように成長したい」と語った。
招待大会で男子ホンコン・チャイナ、女子中国がV
HSBC SVNS 2024第6戦の香港セブンズ と同時開催で、メルローズセブンズ招待大会も行われた。
男子はホンコン・チャイナ、中国、日本の3チーム、女子はホンコン・チャイナ、中国、タイの3チームで1回戦総当たりを行い、上位2チームが招待大会決勝に臨んだ。
男子はプール戦では日本に14-33と敗れていたホンコン・チャイナが1勝1敗の2位で決勝に進出。地元ファンの大声援を受けて、2勝で決勝進出した日本を22-12で退けて優勝。女子決勝では中国がホンコン・チャイナに24-10で勝利して、やはり、プール戦の敗戦(12-19)の雪辱を果たして優勝した。